職場でも家族でも、「あの人にどう思われただろう」と考えて、一日の終わりにぐったりしてしまう。そんな疲れ方に心当たりがある方に向けた記事です。
この記事を読むと、『嫌われる勇気』の核となる三つの考え方(目的論・課題の分離・共同体感覚)の中身と、日常でどう使えるか、そして使うときの注意点がわかります。
『嫌われる勇気』とはどんな本か
『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』は、哲学者の岸見一郎氏とライターの古賀史健氏の共著で、ダイヤモンド社から2013年12月に刊行されました(紀伊國屋書店の書誌情報)。
形式は、アドラー心理学を身につけた「哲人」と、悩みを抱えた「青年」の対話で、全五夜の構成です。読者が抱きそうな疑問や反論を青年が代わりにぶつけ、哲人が答えるので、理屈だけの本より読み進めやすいと紹介されています(書評記事(ほんのひきだし))。
売れ行きについては、版元のコメントとして国内228万部、世界累計500万部超と報じられた例があります(幻冬舎ゴールドオンライン)。ただし、この数字は記事が出た時点のものです。最新の部数は版元で確認してください。
考え方1:過去ではなく「いまの目的」で見る(目的論)
一つ目は、過去の出来事が今の行動を決めるという「原因論」ではなく、人は今の目的に沿って行動するという「目的論」の見方です。
解説記事では、たとえば「過去の経験があるから引きこもる」と考えるのではなく、「誰かに気にかけてほしい」という目的が行動を生んでいる、と捉える例が紹介されています(ほんのひきだし)。
使いどころは、「どうせ自分は〇〇だから」と過去を理由に足が止まったときです。「いま自分は何を得ようとして、この行動(または行動しないこと)を選んでいるのか」と問い直すと、選び直す余地が見えてきます。
考え方2:「これは誰の課題か」を切り分ける(課題の分離)
二つ目が、この本でもっとも知られた「課題の分離」です。対人関係でもめたとき、まず「これは誰の課題か」を考えます。判断の基準は、「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か」という問いです。
解説では、親が子どもの結婚に反対する例が挙げられています。結婚するかどうかを決め、その結末を引き受けるのは子ども自身なので、それは子どもの課題です。課題を分けて考えれば、不要な干渉や衝突を減らせるとされています(ほんのひきだし)。
身近な場面に置き換えると、次のようになります。
- 自分が資料を丁寧に作ること:自分の課題
- その資料を相手がどう評価するか:相手の課題
- 頼まれていない助言を相手が受け入れるか:相手の課題
「人にどう思われるか」は、相手の頭の中で起きることです。そこまで自分の責任にすると、いくら気をつかっても終わりがありません。自分が責任を持てる部分に集中するための線引きだ、という説明もあります(OGGI)。
考え方3:ゴールは「居場所がある」という感覚(共同体感覚)
三つ目は共同体感覚です。他者を仲間とみなし、そこに自分の居場所があると感じられる状態を指し、この本では対人関係のゴールとされています。課題の分離は、そこへ向かう出発点という位置づけです(ほんのひきだし)。
英語では「social interest」と訳され、要するに他者への関心だ、という説明もあります(ダイヤモンド・オンライン)。「切り離して終わり」ではなく、切り分けたうえで他者と協力していく方向までを含む考え方です。
使うときの注意点
この考え方には、慎重に読むべき指摘もあります。
- 課題の分離は、対人関係の悩みへの最終的な解決策ではないという指摘が、東洋経済オンラインの記事にあります(東洋経済オンライン)。
- 共同体感覚は、アドラー心理学の鍵になる概念であると同時に、評価がもっとも分かれる議論の一つだと紹介されています(ダイヤモンド・オンライン)。
「何でも相手の課題だと切り捨てる」使い方は、本来の趣旨から外れます。切り分けは、関わりをやめるためではなく、関わり方を整えるためのものです。
今日からできる小さな一歩
今日、気になったことを一つだけ選び、「結末を引き受けるのは誰か」と自分に問いかけてみてください。自分の課題なら動き、相手の課題なら手を出さずに見守る。この切り分けを一度やるだけでも、頭の中の荷物は少し軽くなるはずです。
なお、ここで紹介した内容は書評や解説記事に基づく整理です。本の細部まで知りたい方は、ぜひ原著をお読みください。