令音CEO / AIと人のハイブリッドで事業支援

調べものは、仕事の中でいちばん「時間が溶けやすい」作業だと思う。検索して、開いて、読んで、また検索して——気づけば1時間経っていて、しかも結論が出ていない。

私は令音でリサーチの代行を請けていて、AIを使った調べものを毎日やっている。その経験から言えるのは、AIで調べものが速くなるかどうかは、AIの性能ではなく、頼み方の手順で決まるということだ。「○○について調べて」とだけ打って、薄い一般論が返ってきて終わり——これがいちばん多い失敗で、これでは速くならない。

実際に使っている5ステップを公開する。

ステップ1:問いを「一文」にする

調べ始める前に、知りたいことを疑問文ひとつに圧縮する。

「補助金について調べたい」ではなく、「従業員5人の飲食店が、設備更新に使える補助金は2026年時点で何があるか」。ここまで絞って初めて、AIの答えは具体的になる。

逆説的だが、この一文を書く時間こそが最大の時短になる。問いが曖昧なまま走ると、AIも人間と同じで、曖昧な答えを返してくる。

ステップ2:いきなり調べさせず、「調査計画」を先に出させる

これが、知られていないが効果の大きい一手だ。

「この問いに答えるには、何をどの順で調べるべきか、計画だけ先に出して」と頼む。すると、自分が思いつかなかった調べ筋——たとえば国の補助金だけでなく自治体の上乗せ制度、業界団体の助成——が計画の段階で見えてくる。

計画を見て「3番は不要、代わりに○○を追加」と直してから走らせる。調べ終わってから「方向が違った」とやり直すのに比べて、手戻りがほぼ消える。

ステップ3:「出典つきで」を口癖にする

AIの弱点ははっきりしていて、もっともらしい間違いを、自信ありげに言うことがある。対策はシンプルで、「それぞれの情報に、元になった出典・URLを付けて」と必ず添えること。

そして、判断に直結する数字——金額、期限、要件——だけは、出典のリンク先を自分の目で確認する。全部を確認する必要はない。大事な数字だけでいい。「AIの答えを信じるか」ではなく「どこを自分で確かめるか」に頭を切り替えると、速さと正確さが両立する。

ステップ4:反対材料を、わざわざ探させる

人間は、自分の仮説に都合のいい情報ばかり集めてしまう。AIも、聞かれた方向に沿って答える性質がある。だから一度、逆を向かせる。

「この結論に対する反対意見や、うまくいかなかった事例を探して」。

導入を検討しているツールなら失敗事例を、参入を考えている市場なら撤退した会社を。ここで出てきた材料に耐えた結論だけが、実行に値する。10分の追加作業で、数十万円の判断ミスを防げるなら安いものだ。

ステップ5:要約は自分の言葉で一段落

最後に、調べた結果を見ながら、自分の言葉で一段落だけ書く。「要するに、うちの場合は○○で、次にやることは△△」。

AIの長い報告書をそのまま保存しても、後で読み返さない。自分の言葉に直した一段落だけが、次の行動につながる。ここはAIに任せない方がいい数少ない工程だ。

このフローで何が変わるか

体感では、半日がかりだった調べものが30分〜1時間に収まる。それ以上に大きいのは、「調べきれないから、なんとなくで決める」がなくなることだ。調べものの速さは、そのまま意思決定の質に直結する。

とはいえ、この5ステップを毎回自分で回す時間すらない、という方もいるはずだ。令音では、このフローをさらに深くした形でリサーチの代行を請けている。「この件、裏取りまで含めて調べてほしい」があれば、気軽に相談してほしい。