石垣空港の国際線は、2020年2月から約5年間途絶えていました。それを復活させたのが、業界未経験のまま起業した1人の元銀行員です。2億円の借入がどのように130億円規模の経済効果に変わったのか、報道されている事実を手がかりに、資金調達と地域経済の関係を整理します。読み終える頃には、大きな数字の裏にある小さな意思決定の積み重ねが見えてくるはずです。

5年間、国際線が消えていた石垣島

石垣空港の国際線は新型コロナウイルスの影響で2020年2月に途絶え、以後約5年にわたって復活しませんでした(東洋経済オンライン)。観光地としての知名度は高くても、路線がなければ海外からの直行需要は取りこぼされたままになります。この空白を埋めたのが、地元・竹富町黒島出身で当時29歳(現在32歳)の又吉良氏でした。

元銀行員が2億円を借りるまで

又吉氏はもともと石垣支店で銀行員として働いており、国際線が地域経済に与える影響を数字で理解できる立場にいました(東洋経済オンライン)。2024年3月、航空機の誘導・給油・手荷物の積み下ろしなどを担うグランドハンドリング会社「株式会社ケイトマン・ザ・スカイ」を設立し、銀行から約2億円を借り入れます。業界未経験者が地上支援業務という専門領域に、まとまった借入で参入した点が、この事例の起点になっています。

財布に1000円、車を売って掴んだ商談

設備投資で借入をほぼ使い切り、手元資金が1000円まで減った時期があったと報じられています。又吉氏は査定額230万円の自家用車を120万円で売却して当面の資金を確保し、那覇空港の外国航空会社カウンターを直接訪ね歩いて営業をかけました(東洋経済オンライン)。この地道な訪問営業が、後の路線誘致につながっていきます。

半年で結んだ3路線、130億円という数字の中身

営業活動の結果、2025年4月3日には香港エクスプレス航空による石垣—香港線と、ジンエアーによる石垣—ソウル線が就航しました。続いて同年5月28日からは、チャイナエアラインによる台北(桃園)—石垣線が週2便(水・土)で運航を開始しています(石垣市、八重山毎日新聞社などの報道)。石垣市はこれら国際線復活による2025年度の経済波及効果を約130億円と推計しており、これは石垣市の地域GDP(2023年度時点で約1776億円)と比べても無視できない規模です。2026年9月には台湾南部・高雄への新規就航も予定されています。

個人の資金調達が地域経済を動かす設計図

この事例が示すのは、莫大な自己資金がなくても、地域が必要としているインフラの欠落を正確に見極め、借入という手段で先に動くことで大きな波及効果を生み出せるという構造です。又吉氏の強みは航空業界の専門知識ではなく、銀行員時代に培った「地域経済のどこに空白があるか」を読む視点と、借入の実行後に手を止めなかった行動力にありました。地方創生や地域ビジネスを考えるとき、まず問うべきは資金の大小ではなく、埋めるべき空白がどこにあるかなのかもしれません。

出典: 東洋経済オンライン「「5年も国際線が消えていた」石垣島に起きた"大異変"…業界未経験の29歳が2億円借りて生み出した「130億円」の経済効果」