フォロワーや再生数は順調に伸びているのに、なぜか収益には結びつかない。そう感じている個人クリエイターは少なくありません。個人VTuberとして活動する由宇霧氏が刊行した『バズらず稼ぐ技術』(インベーダーズ出版)は、この悩みの正体を「有名になることと稼ぐことは別のスキルだから」と整理しています。この記事では、同書の内容と公表されている広告収益の統計をもとに、バズらなくても収益を作るための考え方を整理します。

なぜ「有名になること」と「稼ぐこと」は別スキルなのか

同書の著者は、登録者20万人超・複数の動画が100万回再生を超えるチャンネルを運営していながら、その時期の収益はほぼゼロに近かったと振り返っています。再生数がそのまま収入に直結すると考えがちですが、実際の広告収益の仕組みを見るとそうではないことがわかります。

YouTubeの広告単価はジャンルや季節によって変動しますが、業界解説記事では1再生あたりおおむね0.1円〜0.5円程度とされています。この単価で計算すると、広告収入だけで月20万円を得るには月70万回前後の再生数が必要になる計算です。フォロワーや再生数という「有名さ」の指標を伸ばすスキルと、実際に対価を受け取る仕組みを作るスキルは、意識して別物として身につける必要がある、というのが同書の主張です。

バズっても稼げない人がハマる3つの落とし穴

同書では、稼げない人が陥りがちなパターンとして次の3つを挙げています。

  1. 売るものがない — 発信は続けているが、対価を受け取れる商品やサービスをそもそも用意していない
  2. 実績が見えない — やってきたことを記録・提示していないため、依頼や購入の判断材料を相手に渡せていない
  3. 宣伝=悪だと思い込んでいる — 「押し売りになるのでは」という不安から、告知や販売の機会を自ら手放している

同書はこの状態を「お店にメニューも値札もなければ、どんなにお腹が空いている客でも注文のしようがない」とたとえています。フォロワー数を増やす努力と同じかそれ以上に、「今すぐ対価を受け取れる状態」を先に整えることが優先課題だと位置づけています。

フォロワー集めより先に「決済導線」を作る

同書が勧める順序は、フォロワーを増やしてから商品を用意するのではなく、先に「今すぐお金を受け取れる状態」=決済の導線を作ることです。商品は完成させてから出すのではなく、6割程度の完成度でいったん出し、反応を見ながら修正していくという考え方も示されています。商品そのものも「すごいもの」である必要はなく、「少し前の自分が欲しかったもの」を想定して作れば十分だという視点です。

実績は「すごい成功」ではなく「やったこと」の記録

同書は、実績を華々しい成功体験に限定せず、「実際にやったこと」の積み重ねとして捉え直すことを勧めています。1回でも取り組めばそれは実績であり、記録として残していないと、相手はそもそも依頼や購入の判断ができません。記録は他人への証明であると同時に、自分自身の営業資料としても機能する、という位置づけです。

宣伝は「説得」ではなく「翻訳」

もう一つの論点が、宣伝や告知に対する捉え方です。人は理屈やメリットの説明だけでは動きにくく、感情や「自分にとっての意味」が伝わったときに行動する傾向があるとされます。同書はこれを踏まえ、宣伝を「説得」ではなく「翻訳」——商品の価値を、相手が受け取りやすい言葉に置き換える作業——として捉え直すことを提案しています。売り込み感を消すための工夫として、この視点の転換は参考になります。

再生数やフォロワー数はあくまで「有名さ」を測る指標であり、収益化の成否を直接決めるものではありません。バズる前に、まず自分の手元にある「今すぐ受け取れる状態」を整えておくことが、遠回りに見えて一番の近道なのかもしれません。