経済が国家の道具として使われる場面を、見取り図から理論と実証まで4冊でたどるシリーズです。どの巻からでも読めます。
同じ対象を、4つの深さで扱っています。
制裁、輸出規制、資産凍結、資源、海運——ニュースは断片で流れてきます。どれも別の話に見えますが、国家が経済を道具として使うときの筋道は、驚くほど共通しています。
その筋道は、見取り図として1冊で眺めることもできるし、枠組みとして丁寧に確定することもできるし、実際の戦争を題材に条件ごとに読み分けることもできるし、推定できる形に書き直して検証することもできます。必要な深さが読む人によって違うので、4冊に分けました。
4冊は積み上げ式ではありません。前の巻を読んでいないと分からない、という作りにはしていません。重なる部分は各巻で必要なぶんだけ書き直してあります。1冊だけ読んで終わりでも成立します。
目的から選べます。迷ったら『地経学の全体像』が入口です。
刊行順ではなく、読む順に並べています。
取引そのものを禁じる(制裁)、入ってくるモノに値札を足す(関税)、出ていくモノと技術に許可を求める(輸出管理)、資本を審査する(投資規制)、支払いの経路を止める(資産凍結・決済遮断)、供給を絞る(資源・食料)、運ぶ手立てを止める(物流・海運・保険)。この7つを同じ物差しで並べます。
海外への送金も、部品の通関も、外国株の売買も、ふつうの商取引です。ところが同じ行為が、ある日を境に「制裁の対象」と呼ばれる。取引は何ひとつ変わっていないのに、です。この境目のあたりで起きていることを指す言葉が「地経学」です。
戦争のニュースには経済的な手段が次々と登場します。だが、それぞれが何を狙い、誰が代金を払い、どこまで効いたのかは、記事を読むだけでは判定できません。本書は同じ手段が違う条件のもとで結果を分けた事例を、章ごとに二件以上の比較で示します。
この分野について、私たちは大量の主張を目にします。だがその主張のほとんどは、そのままでは検証できません。何を「効いた」と呼ぶのか。その量は、手元のデータで識別できるのか。答えを配る本ではなく、判定する道具を渡す本です。
『全体像』と『入門』が渡すのは知識の一覧ではなく、この手順です。
この五つを当てられれば、次に同じ種類のニュースが流れてきたとき、解説を待たずに自分で読めます。
扱う深さは違っても、書き方の約束は同じにしてあります。
通説として広く流通しているのに研究の側では否定されていたり、まだ決着がついていなかったりする話を、確かめられた話と同じ顔で並べません。
条文・条約マニュアル・査読論文の原文にあたり、引用は出典を明示します。引用する推定値は公刊版のもので、公刊版を確認できなかった文献は、その旨を明記して数値を書いていません。
ある手段が正しいか間違っているかは書きません。判定を始めると、読む人が自分で判断するための道具が使えなくなるからです。
見えない費用を見えるようにしないと、この分野の議論は必ず片側に寄ります。狙っていない誰かに何が起きるのかを、各巻で扱います。
4巻あわせて図版180点。すべて白黒で読めるよう、線種と網掛けだけで意味が通るように作図しています。
この分野は動きが速いので、各巻の冒頭に「どの時点までの情報で書いたか」を明記しています。
購入前に迷いやすいところをまとめました。
ありません。前の巻を読んでいないと分からない、という作りにはしていません。重なる部分は各巻で必要なぶんだけ書き直してあるので、1冊だけ読んで終わりでも成立します。目的に合う巻を「どれから読むか」から選んでください。
『地経学の理論と実証』だけです。ほかの3冊は数式を使いません。仕組みを追うことが目的なので、言葉と図で足ります。上級編だけは、仮定を外したときに結論がどう変わるかを追えるようにするため、形式モデルを実際に式で書いています(独立行の数式75本)。
どちらでも読めるように作ってあります。図版が多いシリーズなので、じっくり読むなら紙が読みやすいかもしれません。『地経学の理論と実証』の電子版は、図版を藍の単色インクで作り直してあります(紙版は白黒)。
『全体像』『入門』『戦争と地経学』は、経済学の予備知識を前提にしていません。『地経学の理論と実証』は学部上級〜大学院導入で、準備章が本書で使う経済学・計量経済学の道具を必要な範囲で配ります。
各巻の冒頭に「情報の基準時点」を明記しています。この分野は動きが速いので、その日以降の出来事は本文に反映されていません。基準時点より後の展開は、本書の枠組みを使って読者が自分で読めるように書いてあります。
はい。『地経学の理論と実証』(2026年8月)で全4巻が揃いました。